バタッ
「ってぇ・・・・」
何かにつまずいた様子のサビノは立ち上がり、また歩き出した。
サビノは、耳をピクッとさせ、身の毛がよだったようにがくがくと震えだした。
「な・・・なっ・・・な・・・!!!」
サビノが指差すほうには、にょろっとした蝸牛がいた。
雨上がりだったからだろうか。紫陽花の上に親子仲良くいた。
サビノは、動けなくなりその場に立ち尽くした。
「・・・!?」
ポンッ
不意にサビノの肩を誰かが叩いた。
辺りを見回してみても誰も居ない。
気のせい?もしかして――・・・・
なんて思っていると、横からひょこっと顔を出した人物がいた。
「サビー・・・蝸牛嫌いなのか?」
と言うと、その人物は手に蝸牛を乗せ、ほいとサビノの顔に突き出して見せた。
それまで、身動きもとらなかったサビノがはっと我に返ったような素振りをした。
「や、やめろっ!!やめろってば梓哉!!こっちにやるな!」
「えー?可愛いのに?ちぇ、残念だな。」
梓哉は蝸牛を紫陽花の上に戻すと、手をハンカチで拭いた。
そして、両手をサビノの顔の前に出した。
「何だよ・・・。」
「ここに俺のハンカチ掛けてみて。目を瞑って1,2,3って数えてみろよ!!面白いこと起きるからさ!!」
サビノは、渋々梓哉の言う通りにした。
「え?・・・何かある?」
「ハンカチめくってみ?なんがあるかも~?」
ニヤニヤしながら梓哉は両手を突き出した。
バサッという音を立ててハンカチをめくってみると、サビノは目をキラキラさせた。
「リ、リンゴだーっ!!!」
「当たり。それ、サビノにあげるから機嫌なおせよ。」
梓哉は、サビノにリンゴを手渡すとそのまま先に行ってしまった。
「梓哉ー、リンゴ、ありがと・・・な!」
どういたしましてー!!と言う声が聞こえた。
空を見上げて。の木村瑞希さんに頂きました